13TH ~ 現代の奴隷制度

13TH

ワクチン接種によりコロナ禍から抜け出しつつアメリカでは、コロナ禍以前の問題が噴出しています。例えば警察が黒人を逮捕するときに殺めてしまうという事件が再び発生しているのです。

黒人はどう頑張っても白人警官に殺される運命なのか?ということをそっくりそのまま主題にした「隔たる世界の2人」という作品がアカデミー賞短編実写映画賞(2021年)を受賞しましたが、今回はそもそもなぜ?黒人への差別は続いているのか?という疑問に答えるヒントになりそうな作品を紹介します。

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構造的な問題

リンカーンの最大の功績が『奴隷解放』が日本人的な考え方です。アメリカン人は『アメリカを一つの国家に成し遂げた功績』こそがリンカーンの功績であり、だからこそリンカーンは第二の国父とまで呼ばれているのです。

リンカーンの本心も奴隷解放よりもアメリカを一つの国家にすることにあったのです。その証拠に南北戦争の火ぶたが切られた時、リンカーンは「南部諸州がもし独立を取り消してアメリカ合衆国に帰ってきてくれるのならば、従来どおり奴隷制を維持してよろしい」とまで宣言しています。

リンカーンによりアメリカ合衆国が一つの国家、一つの国民として統合されたのは確かです。黒人も白人も、本土に住んでいる人もハワイに住んでいる人も、カトリックもプロテスタントも、みな等しくアメリカ人となったのです。

人民の存立条件

南北アメリカが統一されるためには、地理的な統一だけでは無意味です。人種、宗教、階級、階層など、あらゆる人間的差別は坩堝(るつぼ)のなかで融解されなければなりません。

そのためには「みんな等しくアメリカ人」という意識が確立され、正当化され、連帯が成立しなければいけません。そうでなければそもそも「人民」は成立しないのです。だからこそアメリカ人はいかなる差別にも反対するのです。

しかしだからといってアメリカという国は資本主義を捨てたわけではありません。資本主義の成長には『搾取』が必要となるわけですが、これまで黒人奴隷から搾取していた利益をどうすれば「みんな等しくアメリカ人」という意識のもとで維持できるのでしょうか?

犯罪者の人権は制限

奴隷解放宣言後に権力者が安い労働力として目をつけたのは「犯罪者」でした。人種、宗教、階級、階層などのあらゆる人間的差別は「一つのアメリカ」という理念に反するけれど、「犯罪者への差別」までは反対されないだろう・・・ということに当時の権力者たちは着目したのです。

そしてアメリカの権力者たちは、安い労働力を確保するために『黒人=犯罪者』という意識を刷り込むプロパガンダを展開して白人の不安を煽り、黒人を逮捕して刑務所の中で安い労働力として搾取する仕組みを構築することに成功したのです。そう。黒人への差別は、特定の個人による差別というよりは、構造的な産物なのです。

2021年、バイデン大統領は警察改革法案の成立に意欲を燃やしています。法案には、警官が容疑者を拘束する際に首の頸動脈を押さえつける手法の禁止、令状なしの家宅捜査の禁止、警官を訴訟から保護する「限定的免責」の廃止が含まれています。(法案自体は2020年6月に下院を通過。上院を通過せず。)

警察改革法案が成立すれば「息ができない」と言いながら亡くなるかわいそうな黒人は減るかもしれません。しかし「犯罪者を安い労働力として活用する」という構造が温存されるかぎりは、おそらく現状はほとんど変わらないでしょう。