アフターバブル ~ 幻想が壊れた後に何をするか?

アイドルグループ「NMB48」の人気メンバー・山本彩加さんが、芸能界を引退し、看護師を目指すことを明らかにしました。看護師を目指す理由は、「コロナ患者を診ている看護師の姉に触発されたから」なのだそうです。

多くの女性が憧れる『芸能界』というキラキラした世界に見切りをつけ、病気や死という現実に向き合う『看護師』になるという決断は、『アイドル界のバブル崩壊』という象徴的な出来事になるのではないでしょうか。

実体経済もバブル

以前、金融市場のバブルについて「株が値上がりしても嬉しくない投資家」という記事にて解説しましたが、もしかしたら「わたしは株も為替もやっていないので、そういう話はわたしには関係ない」と思った人も多かったかもしれません。

しかしそれは大きな勘違いというものなのです。実は・・・・・金融市場だけではなく「実体経済」もバブルなのです。バブルの行く先は決まっています。一度膨らませたバブルは、「膨らませ続けるか」、「破裂して萎(しぼ)む」しかないのです。

風船を膨らませることを想像してみてください。一度膨らませた風船は、「膨らませ続けるか」、「破裂して萎(しぼ)む」しかありません。金融市場だけでなく実体経済もバブルということは・・・・????

そう。金融市場のバブルが弾けても誰も驚かないように、実体経済のバブルが弾けてもなんら不思議なことではないのです。しかし・・・・「実体経済自体がバブル」という考え方は、あまり一般的ではありません。

ですから実体経済のバブルが弾けても、ほとんどの人がそれに気づかないまま「不景気だから」と言い訳をして、見たくない現実を直視することを放棄する可能性が高いと思うのです。では実体経済がバブルというのは一体どういうことなのでしょうか?

19世紀と同じ感染症対策

実体経済がバブルであることはコロナ禍における感染症対策をみれば一目瞭然です。高度経済成長を遂げた現代社会においても、わたしたちが感染症対策でやれることといえば、「ステイホーム・移動制限・マスク着用」ぐらいなものなのです。

繰り返しになりますが、高度に発展した技術を持っているはずなのに・・・20世紀初頭に比べれば想像を絶するほどの経済成長を実現したはずなのに・・・・今、現実にやっている感染症対策はひらすら「ステイホーム・移動制限・マスク着用」なのです。

しかもコロナ禍においてマスクですら思うように手に入らなかったことを覚えているでしょう?「マスク需要があるのだから、すぐに生産できなくても、どこかで誰かが必ずつくってくれるはず」という国民の予想は裏切られ、1カ月経過しても2カ月経過してもマスクは日本でほとんど生産されず、なおかつ輸入されることもありませんでした。

19世紀からわたしたちは本当に進歩しているのでしょうか?しかも「ステイホーム・移動制限・マスク着用」を実施することですら「反対派」と「賛成派」で大論争をやっていて、その間に世界で何十万人もの人が亡くなっているのです。これはどうしたことなのでしょうか?

結論だけいいましょう。残念ながら近代資本主義がスタートしたこの数百年で、わたしたちが生み出してきたものは、ほとんど「バブル的な消費」だったのです。そして残酷なことにバブル的な消費は「実質的な生活水準の向上」とはほとんど無関係なのです。

例えば東京の大都市に住むいわゆるセレブは、2,000円もするサラダボウルをUBER EATSなどのデリバリーサービスで購入します。UBER EATS配達員でもあるわたしにとっては嬉しことではあるものの、地方に住んでいる人たちはそれよりも新鮮な野菜や、山や海で入手した自然の動物や魚を食べていたりします。

そう。大都市やその近郊に暮らす人々は、地方の人たちよりも新鮮でない食料を市場を介して入手し、それに大金を払い、GDPの増加に貢献しているのです。それが大都市に暮らす人たちにとっての「いい暮らし」であり、しかも「いい暮らし」を確保するためにかなり無理して働いている・・・なんてことも珍しくないのです。

さて、ここからが本題です。

バブルへの理解を深めたい方へ

もしあなたがバブルについて興味があるなら「アフターバブル」(小幡績著、東洋経済新報社)を参照してください。『資本主義とはバブルそのものであり、バブルの一形態が資本主義である』と、バブルのほうを資本主義よりも広く捉えている点でユニークな1冊です。

バブルは必ず弾ける

バブルは必ず弾けます。なぜならばバブルというものは「膨らませ続ける」ことでしか成立しないからです。「膨らませ続ける」ことができればいいのですが、それはほとんど不可能です。なぜならば資源はあらゆる資源には限りがあるからです。

山本彩加さんは「コロナがなかったらアイドルをこのタイミングで辞めることはなかった」とコメントしていますが、コロナ禍をきっかけにして「実体経済のなかにあるバブル」に気づいた人は多いのではないでしょうか?

例えば「海外出張」。わたしは帰国子女なので「お父さんが海外に駐在して、日本と海外を行き来する」ということのステータスを間接的に享受していましたし、自分が社会人になり「海外で研修を受ける」というだけで自尊心を満たせることも知っています。

まただいぶ昔の話ですが、キャビンアテンダントとして働き始めた知り合いの女性たちからは、国内線の担当から国際線の担当になることを目指している・・・・なんて話をよく耳にしたものです。しかし自尊心を満たし、かつ楽しい仕事もあくまでも「幻想」(バブル)であることに、コロナ禍をきっかけにして気づいた人は気づいたでしょう。

とはいえほとんどの人はそのような「幻想」を手放したくはないでしょう。当然かもしれません。幻想は残しておくに限るのです。だから「コロナ禍は我慢の時、嵐が過ぎれば元の日常が戻ってくる」と信じたくなる気持ちは痛いほどわかります。

しかしコロナ禍のあとに、海外旅行の観光業や、海外渡航のビジネス客が戻ってくる保証はどこにもないのです。バブルを維持するには、膨らませ続ける努力が必要ですが、一旦バブルが弾けてしまうと、それ以降に膨らませる努力をし続けることは合理的であるとは限らないのです。

それでもバブルにのるか?

そういうわたし自身もバブルから多大なる利益を得てきました。新卒で経験した「外資系の経営コンサルタント」という職業で得た利益の源泉も、今振り返って考えれば、世界的な経営コンサルタントとして知られている大前研一氏がつくった大きなバブルのおかげといっていいでしょう。

わたしの記憶によると当時28歳だった大前研一氏が世に送り出した「ストラテジックマインド」は世界的なベストセラーになり、戦後第一世代の日本の経営者から「外資系コンサルタント」≒「高付加価値」≒「高単価」という評価を勝ち取ったのです。

天才・大前研一氏が創り出したバブル(幻想)がなければ、わたしが「外資系の経営コンサルタント」に憧れることもなかったでしょうし、実際に「外資系の経営コンサルタント」として働き高給をもらい貴重な経験をさせてもらうこともなかったでしょう。

キャビンアテンダントになりたい学生が後を絶たないように、東京大学など名の知れた大学の学生も外資系の経営コンサルタントに憧れて内定を勝ち取るために四苦八苦しているようですが、何度も繰り返しますが、それは「幻想」(バブル)の世界に飛び込むということなのです。もちろん「アイドルになりたい」もそうでしょう。

いまわたしがやっているUBER EATS配達員だってバブルでしょう。特別なスキルもない人間が自転車をがむしゃらに漕ぐだけで、月収100万円だって稼げるかもしれないなんて・・・・「バブル」以外のなにものではないでしょう。しかしバブルはいつか弾ける運命にあるのです。この記事を書いている最中に「京都や福岡では配達員報酬が平均3割も引き下げられた」というニュースも目にしました。

ブログでアフィリエイトをやっていたときもバブルの勢いというものを肌で感じていました。ブログを量産してアフィリエイトやると、うまくいけば月間数百万円稼げる・・・なんてバブルでしょう。

仮想通貨なんていうのもそうでしょう。わたしの知人の10人中10人が「ビットコイン?なにそれ」というときに購入したビットコインの価格は、10人中10人がビットコインを知っているというタイミングになった時には何倍もの価格になっていました。

バブルにのるなら弾けるうちに逃げるか、バブルが弾けないように努力するかしかありません。個人的な経験でいうなら、バブルがいつはじめるかビクビクしながら生活するなんて楽しいことではないと思いますけどね。あなたはどうしますか?