ヒトラー ~ カリスマは間違いを認めない

ヒトラーは最後まで自らの失敗を認めることはありませんでした。なぜでしょうか?

今回はヒトラーの秘書として敗戦までを地下壕で過ごし、ドイツの降伏と、ソ連のベルリン占領を体験したトラウデル・ユンゲの手記に基づく映画を紹介しつつ、そのことを解説したいと思います。

予告動画)ヒトラー

ヒトラー・フロイトの定理

ヒトラーが亡くなるまでの『最期の12日間』を描いたこの作品を鑑賞した方は、「なぜ?ヒトラーはもっと早く降伏を決断しなかったの?」と疑問に思うでしょう。しかしもしあなたが急性アノミー論についての知識があれば、ヒトラーの行動に共感はできなくても理解はできるはずです。

急性アノミー論については、すでにローマ・カトリック心理学者のフロイトをテーマにした作品を通じて解説してきましたが、急性アノミー論の別名が「ヒトラー・フロイトの定理」と呼ばれていることからもわかるように、ヒトラーも急性アノミーを深く理解していました。

「どうすればゲルマン民族の復興と世界征服という野望を実現できるだろうか?」という問題意識をもっていたヒトラーは、そのヒントをローマ教会に発見します。ローマ・カトリックは1,500年以上もキリスト教のなかでも最大の宗派たりえるのか。それは「ローマ教会が絶対に教義の過ちを認めないからである」とヒトラーは理解したのです。

不安の埋め合わせ

急性アノミー論を武器にして現代の日本を観察すれば、急性アノミーを発症していると思しき狂人たちがウジャウジャしています。急性アノミーを発症している人の特徴は「目的がよくわかっていないのに頑張る」です。

急性アノミーの状態に陥ると不安になり、不安を埋め合わせるためにいろいろと行動するようになります。しかし行動する目的はあくまでも「不安を埋め合わせる」ためなので、そこに合理的な思考があるわけではないのです。だから「安全を達成することによる安全を得る」という常識的な発想も日本には皆無なのです。

あなたは日本人が口癖のように「政府はわたしたちを『安心』させてほしい」といっていることに気づくいているでしょうか。しかし安心は心の働きである以上、人それぞれの問題なのであって政府がどうにかできる問題ではないのです。.10万円を支払えば多少の安心は得られるかもしれません。しかし国民全員に10万円をバラまいても安全は確保されないのです。

無目的だから計画もない

コロナ禍の日本を観察すれば、目的合理的な思考がまるでないことがよーくわかるはずです。例えば「緊急事態宣言の目的はなにか?」という疑問を街ゆく人に質問すれば、「医療崩壊を解消するため」、「経済を回すため」、「オリンピックを開催するため」、「人の命を守るため」など、いろいろな答えがでてくるでしょう。

そう。緊急事態宣言に従っている人も「目的」をよくわかっていないのです。目的がよくわかっていないので、計画もないのです。計画がないからいきあたりばったりになり、各個人が頑張るしかなくなってしまうのです。

コロナ対策にちゃんとした目的があれば、目的を達成するために計画が立案され、目的を達成したら「頑張るのは終わり」にできるのです。しかしコロナ禍における日本には目的もなければ計画もないのです。だから各個人が頑張るしかない状態が、日本ではズルズルと1年以上も放置されてしまっているのです。

そう。驚くべきことなのでもう一度繰り返します。「緊急事態宣言をやっている目的」について日本国民の総意というものは存在しないのです。だから計画もないのです。象徴的なのは東京オリンピックの延期とその後の政府の動きでしょう。

オリンピックの延期を決断した時、「1年後、どのような目標を達成していたら東京オリンピックを開催できるのか?」という問題提起はまるでなく、目的も計画のないまま1年が経過しようとしているのです。だからいまさら「東京オリンピックは本当に開催できるのか?」という疑問が、東京オリンピック開催直前までくすぶっているのです。

日本がコロナ対策という点において世界から取り残されている不甲斐ない状況は、たまたまでなく必然の帰結なのです。