東京大学名誉教授で政治思想史学者の故・福田歓一先生が、ノーベル物理学賞の湯川秀樹博士とある晩、一緒に食事をしていたところ、ふと福田教授が「憲法や議会は、民主主義と何の関係もないのですよ」と話したら、湯川博士ほどの学者もビックリ仰天!!!
湯川博士は「僕がこんなことも知らんのは、福田さんが教科書を書かないのが悪いんや」といったそうですが、福田教授は自身のエッセイで(このような事実を)「はっきりさせたのでは、教科書検定を通る気づかいはない。」と述べています。
おそらく文部省の役人たちは、議会があって、憲法があれば、日本の民主主義は安心だと国民に思わせておきたいでしょう。なぜこのような話をしたのかといえば、2022年から高校の家庭科で「投資」について教えることになったのですが、その内容がまったく的外れであることを伝えたいからです。
2022年2月22日、東京立正中学・高校では「20年前に10万円をコカ・コーラとナイキに投資するどうなるか予測する」というテーマで模擬授業が行われ、その様子がメディアに公開されていました。
東京立正中学・高校の模擬授業では、20年前に10万円をコカ・コーラとナイキに投資した場合、10万円の現金がそれぞれ40万円・300万円に増えた・・・・・という結果が紹介されていましたが、ツッコみどころがたくさんあります。
最大の問題は「投資とは株式等の金融商品を購入することである」ということを自明の前提として高校生に刷り込んでいる点です。
実は・・・・・そもそも『投資』というのは「生産財を購入すること」なのです。例えばタクシーの運転手が商売のために車を購入することや、料理人が包丁を購入することを『投資』というのです。
つまりそもそもの『投資』というのは虚経済(金融の世界)の概念ではなく実体経済の概念なのですが、「投資というものは株式などの金融商品を購入することなんですよ!!!」と学校の授業で刷り込んでいるわけです。
もし日本の高校生に「資産を形成してほしい」と願うなら・・・・・・「投資というものは株式などの金融商品を購入すること」という証券会社や日本政府にとって都合のいい「情報」を教えるのではなく、「本当のこと」を教えてあげなくてはいけません。
「本当のこと」とは、「お金を使うスキルが上達すればするほど、お金は集まる」という事実です。なぜならば「人は自分よりも上手にお金を使ってくれる人にお金を渡す」という傾向があるからです。
例えばわたしの地元にはラーメン二郎というお店があり、600円あれば幸せになることができます。ラーメン二郎にはいつも大行列ができているのですが、なぜ大行列になるのかといえば、大行列に並んで時間をロスしても「600円の使い道としては最高」だと判断する人がたくさんいるからです。
とはいえ美味しいラーメンを提供するためには、さまざまな設備が必要です。ラーメンを提供するための設備を購入することを『投資』というのであって、金融商品を購入することはあくまでも「金融投資」と呼ぶべきなのです。
もちろん「お金を使うスキルを上達させること」は必要最低限の能力であって、資産を形成するためにはまだまだ学習するべき知識がたくさんあるのですが、今回あなたに伝えたいことは「大事なことを見落とせば、絶対に資産家にはなれない」ということです。
そもそも日本で有名な資産家のなかで、コツコツ働いて手に入れた給料の10万円を投資して資産家になりました・・・・という人がいるでしょうか?孫正義(ソフトバンク)、柳井正(ユニクロ)、前澤友作(ZOZO)といった方々は、金融投資で「資産家」になったのでしょうか?
もちろん資産家も金融投資をしていますが、自分の資産を守るために「金融投資」をしているのであって、資産をつくるために「金融投資」をしているわけではないのです。
ではいかにして資産家は資産家になったのでしょうか?
答え:「お金を集めることに成功したから」です。
なぜお金を集めることに成功したのかといえば、「この人はわたしよりもお金を上手に使ってくれる」と判断してもらうことに成功したからです。
だから孫正義、柳井正、前澤友作は、日本の有名企業の雇われ社長が一生働いても手に入れることのできない資産を手に入れているのです。
大事なことなので繰り返しますが、もし本当に資産形成したいのであれば、「お金を使うスキルを上達させる」必要があるのであって、もっとハッキリいってしまえば「資産がほしいなら働いている場合ではない」のです。
会社で出世することと「お金を使うスキルが上達すること」はイコールではありません。金融投資をすることと「お金を使うスキルが上達すること」はイコールではありません。
もちろん会社で頑張って働くことや、金融投資をすることを否定しているわけではありません。わたしは資産をつくるスキルと、労働者として成功することや金融投資で成功するスキルは似て非なるものであることをお伝えしたいだけなのです。
結局のところ、高校の家庭科で教えてくれることは「働いて手に入れた給料をいかに配分するか?」ということなのであって、労働収入の外にある世界つまり「お金を集めるためには、お金を上手に使うスキルを鍛える必要がある。」という大切なことには一切触れていないのです。
なぜ文部省は「本当のこと」を教えてくれないのでしょうか?
おそらく文部省の役人たちは、マジメに働いて、節約して、貯金して、金融投資すれば将来は安心だと国民に思わせておきたいのでしょう。裏を返せば、金融投資しないのであれば将来がどうなっても「自己責任」ということを国民に伝えることが本当の目的なのかもしれません。
ここに日本政府の大きな欺瞞(ぎまん)があります。そもそも多くの国民が将来に不安を抱えている直接的な原因は「30年以上、日本経済の成長が停滞しているから」です。物価は上昇傾向なのに給料が増えないのですから、不安を抱えるのも当然のことでしょう?
そもそも・・・・物価は上昇しているのに給料がそれほど増えないという状況で「金融投資をしろ!!!」といわれても・・・・将来が不安だからせっせと貯金する国民が多いのだし、金融投資をする元手があるような国民はそれほど将来に悲観していないのではないでしょうか?
フランス革命で処刑されたマリー・アントワネットには「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」という有名なセリフがありますが、日本政府のアドバイスも「給料が上がらなくて将来が不安なら金融投資をすればいいじゃない」ということなのです。
あなたを幸せにするどころかますます貧乏にする「エセ投資教育」にはくれぐれもご注意を!!!(続く)