イカロス ~ 良心の自由だけは手放せない

イカロス

ロシアのドーピング問題のことは多くの人が知っていると思いますが、国家ぐるみのドーピング疑惑の詳細について知っている人はあまりいないでしょう。そこで今回は、ドーピング問題に直接かかわった当事者が出演するドキュメンタリーを紹介したいと思います。

予告動画)イカロス

なぜ裏切るのか?

国で迫害され命の危険がある場合、国外逃亡することは理解できます。『難民』がそうでしょう。しかし国のなかで重要な地位を与えられ、恵まれた環境にいる人材でも国家を裏切ることがあるのです。

今回紹介したドキュメンタリー『イカロス』に登場するグリゴリー・ロドチェンコフ所長もそうです。ロドチェンコフ所長はロシアのドーピング問題の表も裏も熟知する超重要人物でありながら、プーチンを裏切りました。

なぜ?ロドチェンコフ所長は祖国ロシアを裏切ったのでしょうか?

ヒント:1984

ロドチェンコフ所長の愛読書がジョージ・オーウェルの小説『1984』であることがヒントになります。そう。ロドチェンコフ所長は『良心の自由』が侵害されることには耐えられなかったのです。

良心の自由とは、思想・信条の自由のことです。「ロシアのような全体主義国家で、思想・信条の自由もへったくれもないだろう?」と思うなかれ。祖国のために忠誠を誓う人でも『良心の自由』だけはそう簡単に手放すことはできないのです。

ソ連時代、ノーベル賞作家のソルジェニーツィンや水爆の父サハロフも体制に反抗しました。しかしソルジェニーツィンもサハロフもソ連を愛していました。戦争でも勇敢に戦い、言論の自由ですら放棄した忠実な共産主義者でした。それにも関わらず体制に反抗した理由は???

そう。ソルジェニーツィンもサハロフも『良心の自由』だけは手放せなかったのです。外部的行動に関する自由ならば全部諦めることができても、権力が心の内部にまで侵入してくることだけは許すことができなかったのです。