野火 ~ 戦争が日常に潜む

コロナ禍は戦争に例えられるます。しかし戦後70年以上も経過すると日本国民の大半が戦争の実感がわかなくなってしまいました。そこで今回は「日本が戦争に向かっている」ことを懸念している塚本晋也監督の「野火」を紹介します。

予告動画)野火

レイテ島の戦い

太平洋戦争で日本兵の死者数がもっとも多かったのはガダルカナルでもなく、硫黄島でもなく、沖縄でもなく、フィリピン戦線だったことはあまり知られていません。しかも映画の舞台にもなっているレイテ島で亡くなった日本兵は、敵に殺されたのではなく餓死したり伝染病にかかって亡くなったのでした。

なぜそんなお粗末な状況になってしまったのでしょうか?

原因は、連合艦隊参謀長の福留繁中将ら9名がアメリカ・フィリピン軍の捕虜となり、しかも捕虜となるという時に最高機密の書類を破棄しなかったことにあります。「Z作戦計画」と名付けられた最高機密書類には、連合艦隊の全太平洋方面における決戦配備と作戦要綱が記載されていたのでした。

つまり連合艦隊の手の内はアメリカ軍につつぬけだったのです。それだけ聞いただけでも身震いする話ですが、連合艦隊は機密書類をアメリカ軍に押収されていながら計画を変更することをしなかったのでした。

参謀長が捕虜となり、機密書類を破棄せず奪われて、作戦が敵につつぬけになっているのに作戦を変更しないというお粗末な対応が、フィリピン戦線にいた多くの日本兵の命を実際に奪ったといっても過言ではないのです。

無責任体質

福留繁中将はどのように処分されたのでしょうか?

答え:「栄転した」。

当時の海軍においては「捕虜になったら死刑」というのが不文律であり、さらに最高機密を喪失したという致命的な重罪を重ねたにも関わらず、福留繁中将は懲戒免職されることもなく、第二航空司令長官に栄転したのでした。

しかも福留繁中将よりもさらに偉い総司令官・寺内寿一(てらうち ひさいち)元師は、兵士たちがフィリピンの山中で飢餓でバタバタ死んでゆくのに、みずから陣頭指揮をとるわけでもなく、サイゴンの豪邸に赤坂の芸妓(げいぎ)を呼び寄せて楽しく暮らしていたというのですから笑えません。

腐敗体質

塚本晋也監督は、「日本が戦争に向かっている」という問題意識をもって映画「野火」を世に送り出したわけですが、わたしは戦時中の日本軍の無責任体質・腐敗というものが現代にも生きていることを危惧しています。

黒川弘務は東京高等検察庁検事という身分にも関わらず、産経新聞や朝日新聞の記者と賭け麻雀を楽しんでいました。しかし法務省の川原隆司刑事局長は「賭けマージャンは許されるものではありませんが、社会の実情をみましたところ高額と言えないレートでした」などとコメントしています。

「トップが責任を追及されない」という事例はここでは書ききれないほど山ほどあります。最近では、コロナ禍で不要不急の外出や飲食の自粛を求めているのに、厚生労働省の役人は銀座で送別会をしていたり、大阪では市の職員が3月1日から4月4日の間に5人以上での会食などを行っていたケースは200件以上、参加した職員は1000人を超えることがニュースになりました。

日本の政治の無為(変化しないこと)、官僚の退廃と無責任が日本を破滅に追いやっていることに気づかぬままに、日本国民は苦しみ続ける運命なのでしょうか?