ノマドランド ~ 伝統的なアメリカンドリームを感じる体験

ある日突然、住んでいた町を奪われました女性は旅に出ます。そもそもなぜ町がなくなったのか?町にあった大企業が撤退したからです。雇用は失われ、人口は流出し、ついには郵便番号すらなくなってしまったのです。

以前このブログでも紹介した「地図から消された村」というブラジル映画はフィクションでしたが、今回紹介するアメリカ映画はノンフィクションに近い作品です。あなたは今住んでいる町がなくなったらどうしますか?

予告動画)ノマドランド

ノマドの民

旦那に先立たれた主人公のファーン(演:フランシス・マクドーマンド)は、町がなくなったのを機に「ホームレス」ならぬ「ハウスレス」の生活を決心します。年金の支給までまだ時間があるし、年金が支給されたとしても部屋を借りて生活できるほどの金額は支給されないからです。

ファーンは仕事を求めて車中泊をしながらアメリカ中を移動します。サンクスギビングデーのある11月には駐車場と仕事を用意してくれるAmazonnの工場で働き、Amazonの繁忙期を過ぎるとまた別の土地に移動して働くという生活を繰り返すのです。

アメリカではファーンのような生活をする高齢者が増えているのだそうです。特に育児などで正社員として働く期間が短くなりがちな女性は年金額が少なくなりがちなので、旦那に先立たれると急に生活が厳しくなり、ハウスレスの生活を強いられるようになるのです。

さて、ここまで作品を紹介すると「さぞかし暗い作品なのだろう」と思うかもしれません。しかし単純に「これがアメリカの抱える問題だ!!直視せよ!!」と指摘するような押しつけがましい作品ではないのです。そこが『ノマドランド』の見どころです。

お金からの自由

アメリカの建国は1776年7月4日。ヨーロッパからアメリカに移住してきた人たちが求めたものは宗教の自由でした。宗教の自由とは「宗教からの解放」ではなく「宗教の追求」を意味しています。

日本人にはキリスト教といえばどの宗派も全部同じに見えるでしょうが、当時アメリカに移住した人たちは、カトリックではなくプロテスタント(反カトリック)を徹底的に信仰できる土地を求める『開拓者』だったのです。

時が流れると『開拓者』の意味は変わっていきます。資本主義国家アメリカでいうアメリカンドリームとは、ゴールドラッシュを代表される『一攫千金』の意味合いが強くなり、現在では「幸せになるためにお金を稼ぐ」(隣人愛を実践すると結果的にお金持ちになってしまう)というよりも「お金のためにお金を求める」というような態度も尊敬の対象になってしまいました。

宗教の自由を求めてアメリカに移住してきた開拓者たちの子孫は、いつの間にか「お金教」の信者になったのでした。そしてお金教の信者たちのほとんどは「どうしたらお金を稼げるのか?」ということばかりを考えてあせくせと働いて一生を終えるのです。

しかし主人公のファーンたちは社会から見放されることではじめて「お金教」から逃れるチャンスに開かれるのです。ここが『ノマドランド』のポイントです。

開拓者精神

ノマド生活を続けるファーンには、ある日、「定住生活に戻る」チャンスが巡ってきます。「自分はホームレスではなくハウスレスの旅するノマド」などと強がっていても、やっぱり定住生活にはそれなりの良さがあるのは当然であり、ファーンは「ノマド生活を続けるか?それとも定住生活をするか?」という2択にアタマを悩ませるのです。

定住生活に慣れたわたしたちからすれば「迷わずチャンスをつかめ」とファーンにアドバイスしたくもなるに違いありません。しかし『ノマドランド』の作品に没入した後では、必ずしもそうとは断言できない事情があることもわかってくるのです。

ファーンはどのような決断を下すのでしょうか?是非とも『ノマドランド』を視聴して確認してみてください。追伸)『ノマドランド』は映像が素晴らしいので、映画館での鑑賞を強くおススメします。