お家さん ~ 権力という差別原理

お家さん

あなたの職場に、お金にも名誉にも興味がなさそうで一生懸命働いている「偉い人」はいないでしょうか?そういう人は一見すると私利私欲のない人のように見えます。しかし本当にそうなのでしょうか?

制作発表会見)お家さん

MEMO

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鈴木商店

大正時代に大発展を遂げた『鈴木商店』という総合商社がありました。創業者の鈴木岩治郎は、菓子職人という異色のキャリアから鈴木商店を立ち上げ、その手腕によって鈴木商店を神戸でも有名な貿易商に発展させます。しかし天才的な手腕を発揮した鈴木岩次郎は50歳後半で急逝。

鈴木岩治郎の妻「鈴木よね」(演:天海祐希)は「もはやこれまでか」と観念し、周囲のススメもあって廃業を検討するも、最終的には事業の引き継ぐを決心。金子直吉を含む2名の番頭に現場を任せることにしたのでした。

すると金子直吉のブルドーザーのような突破力によって鈴木商店は三井、三菱につぐ規模に発展し、成長率とエネルギー(石油)においては日本一、目をみはらせるような大きな仕事を次から次に打ち出すことに成功。

その後も金子直吉の手腕は冴えわたります。『神戸製鋼』や『IHI』の買収や『帝人』など創立などにも携わり事業の多角化にも成功。鈴木商店が日本一の大商社になる日もそう遠くはないと思われていました。

鈴木商店の大番頭でもあり実質的支配者であった金子直吉に対する評価はとても高く、だからこそ読売テレビ開局55周年ドラマまで制作されるわけですが、金子直吉にはネガティブな側面もありました。

権力欲の塊

実は金子直吉は金にも名誉にもまったく無関心で、主である鈴木よねのために身を粉にして働きました。この点に関して、金子直吉の志を疑うものはひとりもいませんでした。金子直吉は使用人としては完璧な人材だったのです。

しかしその一方で金子直吉は『権力欲の塊』でした。金(給料を上げろ!!!)とか名誉(主人を出し抜く!!)については一切を要求しなかったのですが、権力についてはそのすべてを手放そうとはしなかったのです。

資本主義が徹底している国アメリカでは「会社は株主(オーナー)のもの」という理屈が成り立ちますが、大正時代の日本においては(そして実は現在でも)「会社は現場のもの」なのです。その日本で現場を牛耳るということはどういう意味をもつのか?

そう。世の人は「鈴木商店は金子直吉の私物」とみなしたのでした。だから鈴木商店焼き討ち事件のときなどは、金子直吉がまっさきに命を狙われたのでした。

鈴木商店焼き討ち事件

1917年、米の不作により米の価格が暴騰。米騒動に発展。そのような状況下で1918年8月12日大阪朝日新聞が「鈴木商店は敵国ドイツに米を輸出。」、「鈴木商店が朝鮮米を買い占めた。」などと誤報したことで、鈴木商店の本店が焼き討ちされる。

人間を差別するもの

上流国民、下流国民という区別をするモノサシとして多くの人が想像するのは「お金」でしょう。しかしお金をモノサシにするのが当たり前なのは「資本主義」という前提があるからです。

お金なんてものがあっても豊かに暮らせない社会というものは存在します。かつてのスターリン体制化のソ連がそうでした。お金よりも『威信』(財前五郎!!!)や『権力』(金子直吉!!!)のほうがよっぽど重要なことだってあるのです。

2021年5月31日、自民党はLGBT法案の国会提出を見送りました。自民党の決定に反対するデモ参加者はこういいました。「今まさに、とても生きづらい状況にあって、でも守られない人たちがいて、今生きるか死ぬか(ということを)もしかしたら考えているかもしれない」

豊かに生きるためにもっとも必要なものというのは人それぞれです。あなたと同じものを他人が求めているとは限らないし、他人と同じものをあなたが求めているとも限りません。あなたが「本当に」欲しいものとはなんでしょうか?

受動的な存在から抜け出して豊かさを手に入れるためには、「誰が誰のために何をするか?」、「あなたは誰のために何をするか?」という問いから逃げることはできないのです。