ワン・オブ・アス ~ 共同体のルールとは?

嘉悦大学教授の高橋洋一先生は、平成を「平らに成った時代」だと表現しました。残念ながら令和になってもGDPや平均賃金は上がりません。またコロナ禍に突入した1年以上が経過しても「コロナ患者の病床使用率」や「ワクチン接種数」などもG7(先進七か国)と比較すると『日本は圧倒的な劣等生』というのが現状です。

先日『日本は圧倒的な劣等生』であることを象徴的するセリフがありました。

第3回目の緊急事態宣言前に行われた菅総理の記者会見(2021年4月23日の)において、ビデオニュースドットコムの神保哲生氏が「内閣総理大臣の権限を持ってしても、なぜ日本ではコロナの病床数が増えないのか?」という趣旨の質問をしたところ、驚くべき発言がありました。

菅総理は「平時に法律を作っていきたい」、「落ち着いたら緊急事態の特別措置を作らなければならないと思っている」などとコメントしたのです。裏を返せば「危機の時には何もしない」ということです。

危機の時には仕事をしない』という日本の伝統芸がまたもや証明されてしまったわけですが、今回は「日本が平らから抜け出せない」ことを理解する上で重要なヒントを授けてくれる映画を紹介したいと思います。

予告動画)ワン・オブ・アス

日本語字幕について

ネットフリックスにログインすれば、日本語字幕版のトレーラー(予告編)を観ることができます。

迫害の歴史

ユダヤ人は迫害されてきました。日本人には想像もできないことですが、ユダヤ人は現実に「虐殺」の被害者だったのです。(過去にはユダヤ人の命を救った日本の外交官杉原千畝氏のことも紹介しました。)

ワン・オブ・アスは、虐殺の被害者としてのトラウマを抱えるユダヤ人共同体から抜け出そうとして困難にぶち当たる人たちに密着したドキュメンタリーなのですが、このドキュメンタリーを紹介した理由は、『共同体』というものの特徴をよく理解できると思ったからです。

では共同体の最大の特徴とはなんでしょうか?ズバリ『二重規範』です。

金貸しのシャイロック

社会(共同体の外)にはルール(法律)があり、共同体内部には掟があります。もし法律と掟がぶつかったらどうするか?もちろん共同体のメンバーはルールよりも共同体内部の掟を優先します。掟はルールを超えるのです。

ベニスの商人に登場する金貸しのシャイロックはユダヤ人でした。トーラー(ユダヤ教の啓典)によれば利子をとることは禁じられています。ではなぜシャイロックは金貸しの仕事をやっているのでしょうか?掟がルールに優先するのであれば、金貸しという職業に就くことはできないのではないでしょうか?

答え:共同体内部の掟は、共同体内部にのみ適応される。裏を返せば、共同体内部の掟は共同体の外には適応されないのです。シャイロックはユダヤ人。ユダヤ人相手に利子をとることは掟により禁じられています。しかしユダヤ人以外の人間に対してであれば、利子をとってもOKという理屈になるのです。

日本の共同体

日本には共同体があるでしょうか?答え:あります。どこにあるでしょうか?日本にはユダヤ人共同体のような宗教共同体はありませんが、歴史的な経緯もあって「働く組織」が共同体としての役割を果たしてきました。

そう。日本にはたくさんの共同体が存在していて、それらの共同体は『掟』(社内固有のルール)をもっており、共同体内部において掟はルールよりも優先されるのです。コロナ禍における日本政府の対応が行き当たりばったりになるのは当然の帰結なのです。