真剣勝負ごっこ

2020年末に格闘技ファンの視線を釘付けにしたイベントといえば、「井岡一翔(4階級王者) VS 田中恒成(3階級王者で挑戦者)」の一戦でしょう。

結果は、井岡選手の8ラウンドTKO(テクニカルノックアウト)勝利に終わりましたが、試合結果よりも「タトゥー問題」が注目を浴びてしまいました。

井岡一翔選手がルールに反してタトゥーを隠さずに試合に出場したことに対して、JBC(日本ボクシングコミッション)が「処分を検討する」と発表したことの賛否がSNS上で盛り上がってしまったのです。

ある人は「タトゥーを規制するなんて時代遅れだ。海外の選手をみてみろよ!」と主張する一方で、別のある人は「ルールはルールなのだから守るのが筋」と主張し、お互いの主張は平行線のまま、結局、JBCは井岡選手への厳重注意処分を決定しました。

無論、本記事のテーマはタトゥーそのものの議論ではなく別のところにあります。本題に入る前に、同じく2020年末にタトゥーを隠さずに格闘技の試合に挑んだ「平本蓮」選手の主張を紹介することにしましょう。

【対談】青木真也×平本蓮

二人の格闘家が、さまざまなテーマについて語っているのですが「タトゥー」に関してもこんなことをいっています。(上記動画の7分21秒~)

青木真也

俺さぁ。スゴイ気になったんだけど、あの、入れ墨入れたじゃん?これをラッシュガードきるのかきないのか?っていうことにドキドキしたの。

多くの子たちはさ。地上波に出たい。より有名になりたい。テレビに出ることも大切だから、あの、(ラッシュガード)を着ちゃうと思うのよ。

これ着ちゃったら、思想・信念・主義・主張を否定することになる。だって入れ墨の一個一個に意味があるわけじゃん。誰のためとか、こう戦うとか。

ラッシュガード着てくれっていわれたし、運営者側は、僕にラッシュガードを着てほしかったと思う。

今、ボクシングでも入れ墨問題とかあるけど、井岡さんのアレとかいろいろあるじゃないですか。

結構、まぁ、なんか、うるせーなって(Twitter上で)つぶやくと、(フォロワーから)「そんなに見せびらかしてーのかよ」ってメッセージがあるんですけど、そうじゃなくて、入れ墨は自分の歴史だと思っているんです。自分の思いなんで。これ(入れ墨)も含めて自分なんで。

平本蓮

なぜ?問題をつくるの?

以上のやりとりをみた人の多くはおそらく「ラッシュガードを着て、入れ墨を隠せば、それで何も批判されることがないのに、なぜわざわざ問題を顕在化させるのか?」というように考えてしまうでしょう。

なぜ?わざわざ問題を顕在化させるのか?ということのヒントは、実はさきほど紹介した動画のなかで語られています。(動画2分12秒~)

僕の同世代の選手たちは、試合に自分の人生を全ベット(全部賭ける)しないやつが多い。失敗を気にして、自分に賭けれない。

平本蓮

青木真也

それって結局はさ、真剣勝負じゃねぇじゃんってことでしょ?真剣勝負のふりをした「真剣勝負ごっこ」ってことだよね?多くのものは真剣勝負ごっこであって、今の格闘技の。

音楽だって、プロレスだって、いろんなことに真剣勝負が落ちてる。でも多くのやつが自分の存在を賭けない。そういうやつばっかりでしょ?

ひさしぶりに(平本蓮を)みて、この人、リスク取ってるな。僕の言葉でいうと「思いきり空振り気にせず振ってる」なって。

自分の存在を賭ける

あなたは自分の存在を賭けているでしょうか?

青木真也は、「音楽だって、プロレスだって、いろんなことに真剣勝負が落ちてる。」といいました。そう。真剣勝負はこの毎秒毎秒のなかに落ちているのです。