杉浦千畝 ~「いなかったこと」にされた日本の偉人

杉浦千畝

もしあなたが官僚や政治家の不祥事がニュースになるたびに、「まともな人間はいないのか?」と暗い気持ちになっているなら、映画『杉浦千畝』(すぎうらちうね)を鑑賞するべきです。

ユダヤ人を救った日本人

さきほど紹介した映画『杉浦千畝』の予告動画を観てもらえばわかると思うのですが、杉浦千畝はユダヤ人を救った男です。

ドイツがポーランドに侵攻したことで、多くのユダヤ人が国境を接するリトアニアに逃げてきました。しかしユダヤ人は安心できません。ヒットラーがリトアニアに占領されたら最後。自分たちも虐殺される可能性が極めて高かったからです。

だからユダヤ人はなんとかしてリトアニアから脱出したい。しかし問題がありました。たいがいの国は、ソ連の支配下にあったリトアニアからすでに領事館を撤退させていたため、ビザを発給が極めて難しい状況になっていたからです。

なんとしてでもリトアニアから脱出したいユダヤ人が頼ったのは、ほそぼそと領事業務を継続させていた杉浦千畝のいる日本領事館でした。ユダヤ人は日本領事館に押し寄せて、ビザの発行を懇願してきたのです。

当時、日本はドイツと軍事同盟を結ぶべく準備をしていたので、日本の外務省は杉浦千畝に対してユダヤ人へのビザ発給を拒否するように命令を出していました。しかし杉浦千畝は人道上の理由からユダヤ人へのビザの発給を決断するのでした。

詳細については映画を鑑賞してもらいたいのですが、せっかくなのでここから先は、映画で描かれなかった部分についてちょっくら紹介しておくことにしましょう。

わかっているでしょうが

日本を経由してアメリカに渡った約6,000人ともいわれるユダヤ人は「杉浦千畝」の名前を一生忘れなかったでしょう。杉浦千畝という外交官は、人道上の栄誉と戦後日本の国際的を地位を高めた英断によって昇進したのでした。めでたしめでたし・・・・・ということは・・・・・残念ながら・・・・ありませんでした。

戦後、ユダヤ人勢力は強くなりました。アメリカ国内でもユダヤ人の勢力は無視できないほど強く、ルーズベルト大統領もトルーマン大統領も親ユダヤ主義者でした。ユダヤ人が建国したイスラエル大使に杉浦千畝が就任していれば、ユダヤ人と仲の悪いアラブと日本が仲良くしてもユダヤ人は許してくれたかもしれません。

しかし杉浦千畝は、昇進することもなく大使に命ぜられることもなく、戦後日本に帰国するやいなや「(命令に逆らってビザを発給した件のことで)わかっているでしょうけど」と上司から辞職を勧告されたのでした。

しかも特筆すべき事実は、杉浦千畝がクビになったのは「戦後である」ということです。杉浦千畝がユダヤ人にビザを発行した直後や、戦時中にクビになったのであればまだ話はわかるのですが、ユダヤ人を迫害したドイツとの同盟関係なんてどうでもよくなっている「戦後」に杉浦千畝はクビになったのです。

日本の外務省から杉浦千畝は文字どおり「クビにするのが当然」というレッテルを張られたのでした。杉浦千畝はさぞ無念だったことでしょう。しかし話はまだ終わりません。

杉浦千畝の名誉は、杉浦千畝が亡くなってから5年後の1991年に回復することになります。外務政務次官の鈴木宗男代議士が「領事時代の杉浦氏の行為を訓令違反としたのは誤りであった」と遺族に謝罪したのです。

なぜ日本の外務省は態度を変えたのでしょうか?

答え:リトアニアが独立して「スギハラ通り」ができて、世界のマスコミが杉浦千畝の功績について注目したから。

日本のお家芸再び

「エリートは罰せられない伝統」について以前の記事で解説したことを思い出してください。杉浦千畝が評価され昇進するどころかクビになったのも、杉浦千畝が「主流」ではなかったからです。

杉浦千畝も日本がアメリカと戦争すれば負けると予想しました。昭和16年の時点で日本の若手エリートも「緒戦、奇襲攻撃で勝利するが、国力の差から劣勢となり敗戦に至る」とシミュレーションしたことは有名です。(参考:昭和16年夏の敗戦)

責任をとらない「主流派のエリート軍人」は戦争が見えなくなっていたのです。戦後、軍と財閥は解体されましたが、官僚機構は無傷で生き残りました。そして生き残った日本の大蔵官僚は経済が見えなくなり、失われた30年を経て日本を没落させました。

そして現在も、官僚も官僚の傀儡となり果てた日本政府も「社会」が見えなくなっているようです。東京オリンピックを開催する以前の、全世界的な『コロナ対策オリンピック』では一人負けの状況です。アベノマスクにGOTOやら本当に何をやっているのか・・・・

今日は朝から暗い気持ちになるエピソードを紹介しましたが、わたしは「現実を直視することからしか何事もはじまらない」と信じています。気づくのが早いか遅いかの違いでしかありません。

今日のような話が、あなたがある日突然、日本のダメさに気づいてショックを受けて絶望しないためのワクチンとなれば幸いです。心配はいらない。(わたしには予言めいたことをいう資格も能力もないけれど)それほど遠くない将来、日本人のほとんどがそれに気づくだろうから。

それでは今日もよい一日を!!