二人の教皇 ~ カリスマを保持するものの責任

二人の教皇

ローマ・カトリックが1,500年以上も続いているのはなぜでしょうか?今日はそのことを考えるヒントになる映画を紹介します。

予告動画)二人の教皇

誤りは認めない

ローマ・カトリックが1,500年以上も続いている理由は、絶対に誤りを認めないからです。誤りを認めたら衰退するしか道は残されておらず、崩壊する可能性もあります。

実際に、ソ連も中国も日本の同じ道をたどりました。ソ連は1956年のフルシチョフ、ミヤコンによるスターリン批判によって急速に求心力を失いました。

日本でも当時は大絶賛されて批判することすら許されなかった毛沢東の文化革命も鄧小平により批判されたことにより、共産党というイデオロギーは求心力を失いました。そして中国共産党は近代化路線を進むしか選択肢がなくなってしまったのです。

日本も大東亜戦争(太平洋戦争)の敗戦と、昭和天皇による「人間宣言」を機に、天皇は宗教として機能しなくなり、もはや物質的な欲望を満足させること(つまり経済成長すること)しか国民の支持を得る方法がなくなってしまったのです。(所得倍増計画、アベノミクス 等)

単純アノミー

ソ連・中国・日本を覆ったのは、社会学的には「アノミー」といわれる病気です。アノミーとはなんでしょうか?

アノミー概念を発見したのは社会学の始祖といわれるエミール・デュルケームというフランス人です。デュルケームは自殺の研究を通じて、直観に反する事実を発見します。

直観的には「豊かになったら自殺率は下がる」とか「貧乏になったら自殺率が上がる」と考えるでしょうが、デュルケームは「生活水準が急激に向上した場合でも自殺率が上がる」ことを発見したのです。

なぜ自殺率が上がるのでしょうか?

生活水準が急上昇すれば、それまで付き合っていた人たちとの連帯が断たれます。その一方で上級社会の仲間入りを果たすのも容易ではありません。つまり生活水準が急上昇すれば、それまで付き合っていた人たちだけでなく、上級階級の人たちからも、「成金」という名のレッテルを貼られてたりして板挟みにあってしまうのです。

結果、どこにも所属できなくなった人たちは「無連帯」の状態になり、狂信的になり、ついには自殺するのです。以上がアノミー論の概略です。

急性アノミー

さきほど解説したように生活環境の激変から発生するアノミーのことを「単純アノミー」といいます。「自分の居場所を見いだせない」ことにより、どうしていいかわからなくなり、正常なはずの人間が狂った人以上に狂的になってしまうのです。

このほかに「急性アノミー」と呼ばれる概念があります。急性アノミーは、信じて切っていた人たちに裏切られたり、信じていた教義が否定されたときに発生します。

急性アノミーに陥ったら大変です。急性アノミーに陥った人は茫然自失。冷静な判断ができなくなります。そして急性アノミーが社会に蔓延した場合には、もっと大変なことになります。社会のルールが失われ、無規範となり、合理的意思決定ができなくなってしまうのです。

自分の居場所は?

自分の居場所が見いだせないことはツライことです。先日、「ワン・オブ・アス」というドキュメンタリー作品を紹介しましたが、作品に登場するユダヤ人共同体から抜け出した男性も共同体から脱出したのはいいものの、外の世界で「居場所が見いだせない」ことに苦労しており、一旦抜け出したはずの共同体との関係を完全には断ち切れずにいます。

日本でもコロナ禍によりある日突然職を失うという人が増加しています。日本においては会社が共同体の役割を果たしているため、会社をクビになった瞬間に居場所がなくなってしまうのです。「はやく定年したい」と願っていたはずなのに、いざ定年してみるとしょっちゅう会社に遊びにいくという人もいるそうですが、そういった背景には「会社が共同体になっている」という日本ならではの特殊事情があるのです。

日本は「グローバル資本主義や自由貿易は正しい」という考え方によってもっとも恩恵を受けてきた国の一つです。しかしコロナ禍で世界中の人が直面しているのは「グローバル資本主義は正しい」、「自由貿易は正しい」というイデオロギーの崩壊過程です。日本でもコロナ禍をきっかけに「なんとなく日本はスゴイ」という幻想が崩壊しています。

あなたが無意識に信じていたものがある日突然失われることにより、あなたがアノミーという病にかかるリスクに備えましょう。(ヒント:ゴール仲間