保護者の95%以上が「学歴があっても社会で通用する力が身についていなければ意味がない」という問題意識を抱えているものの、「社会で通用する力」について保護者も学校の教師のほとんどが理解していない・・・・というのが日本の現状です。(参考:社会で通用する力はあるか?)
あなたや子どもの教育に携わっている人たちは「社会で通用する力」についてどれくらい理解しているでしょうか?
実は・・・・・「社会で通用する力」があるかすぐに判定できる方法があります。やり方は簡単です。以下の質問に答えるだけです。
日本社会とはどんな社会ですか?どんな問題がありますか?
もしあなたが日本社会がどういう社会かスラスラ答えることができて、日本社会にどのような問題があるかノドがカラカラになるまで何時間も語ることができるなら、「社会で通用する力」がそれなりにあるのでしょう。
逆にもしあなたが日本社会にどのような特徴があって、どのような構造的な欠陥を抱えているかスラスラ答えることができなければ・・・・残念ながら・・・・「社会で通用する力」がない可能性が極めて高いです。なぜならば「日本社会がどういう社会かわかっていないのに、『社会で通用する力』なんてわかるはずがない」からです。
もしあなたが「日本社会とはどんな社会ですか?どんな問題がありますか?」という質問にスラスラ答えることができないなら、是非とも最後までお付き合いください。
「金持ち父さん貧乏父さん」という日本でもベストセラーになった本があるのですが、著者のロバート・キヨサキ氏が監修している【キャッシュフロー】というボードゲームがあります。
【キャッシュフロー】は労働者から資産家になるのを目指すゲームなのですが、かなりよく出来ています。どのあたりがよく出来ているのかというと、なんとなくプレイしてもダメなのです。なんとなくプレイしても資産家になるという目的を達成できずに、貧乏から抜け出すことができない仕組みになっているのです。
逆に「お金持ち父さん貧乏父さん」で紹介されている『お金の哲学』に忠実にプレイすればするほど勝てる確率が高まるのです。そう。ロバート・キヨサキがボードゲームを通じて伝えたいことは「お金持ちになる法則がある」ということなのです。
わたしがロバート・キヨサキが監修したボードゲーム【キャッシュフロー】について紹介した理由は、お金持ちになるルール・法則があるのと同様に「社会にも法則がある」ということをあなたに伝えたかったからです。
キリンビールの「夢調査」によれば、夢を諦める平均年齢は24歳で、夢を諦める理由の約半数は「才能の限界」なのだそうです。そう。残念ながらどれだけ願っても叶わない夢があるのです。
なぜいくら願っても叶わないのかといえば「ちっぽけな個人」が「大きな社会」を都合よくコントロールするなんてことは不可能だからです。だからわたしたちにできることは「社会には法則がある」ことを素直に認めて、その法則を利用することだけなのです。
例えば結核やハンセン病はかつて不治の病でした。命令したって、泣いてお願いしても、どうしようもありませんでした。しかし医学が進歩してストレプトマイシン(抗生物質)、レプロミン(ハンセン病の種類を決定する手法)が発見されるようになり、結核やハンセン病も治る病気になったのです。
以上のように自然現象には法則があるわけです。「どんな病気でも念力で命令すれば、あっという間に治る」とか、「重力の法則を無視して空中を飛べるはず」なんていう人は少数派のはずです。あなたもきっと「人間は法則を変えることができない」ということに同意してくれるはずです。
しかし残念ながら、自然法則だけでなく、社会現象にも法則があることは特に日本ではあまり理解されていないようです。もし社会法則を理解せずに、行動したらどうなるでしょうか?
命令したって、泣いてお願いしても癌が治らないのと同様に・・・
あなたが銀行に「会社を辞めて独立するから、融資してくれませんか?」とお願いしてもうまくいくとは限らないのです。
政府が国民に「コロナが流行したから不要不急の外出は自粛してください」と要請(命令)しても、うまくいくとは限らないのです。
政府が企業に「利益(内部留保)を蓄えてないで、労働者の賃金を上げてください」と提言しても、うまくいくとは限らないのです。
同様に、あなたが「幸せになりたい・・・」と願ったって、「幸せにしてくれない?」と頼んだって、「幸せにしなさい!!」と命令したって、あなたが幸せになれる保証はないのです。
あなたが子どもに「幸せになってほしい・・・」と願ったって、「もっと頑張ってくれない?」と頼んだって、「ちゃんとやれ!!」と命令したって、あなたの子どもが幸せになる保証も、頑張る保証も、ちゃんとやる保証もないのです。
あなたには何ができるでしょうか?
わたしが外資系コンサルティング会社から内定の連絡を頂いたとき、採用の人事責任者は採用理由を「あなたはマチュア(成熟)な人間だから」といいました。ひらたくいえば「いい人だから」という理由でした。
しかしわたしが社会に出て実感したことは「いい人」なだけでは「社会では通用しない」という当たり前のことだったのです。「社会で通用する力」を発揮するためには「ズルく」なければいけません。
もちろん「ズルい」の意味は卑怯という意味ではありません。ズルくなるとは、社会の働きを熟知するということです。事実、日本の歴史を振り返れば、日本社会を動かしてきた人たちは「ズルい」人たちでした。
例えば伊藤博文(初代内閣総理大臣)は、ロンドンに留学した結果、近代化の秘訣が「キリスト教」にあることを悟りました。とはいえある日突然、「キリスト教を日本の国教にします!!!」と宣言するわけにもいきません。
そこで伊藤博文や明治維新政府を設計した人たちは、日本の近代化を達成するために天皇を「神」に仕立てることにしたのです。「近代化を達成するためには神が必要だ。だから天皇には神になってもらいましょう」というわけなのです。
また第二次世界大戦が終わってアメリカ本国では「戦争責任をとらせるために、天皇は死刑にするべき。」という主張が強かったのですが、日本を直接自分の目で見て確認したマッカーサーは「日本を統治するためには、むしろ天皇が必要」ということを主張して、アメリカ本国を説得しました。
しかし日本の学校では教科書にそのような記述や解説もまったくありません。戦後70年以上が経過した令和になっても続く【戦後民主主義教育】では、「そもそも日本社会とは、どういう社会なのか?」ということに疑問や興味を抱くような事実には一切触れないのです。
マクドナルドは、空調の温度を操作することによって「顧客の滞在時間」(≒回転率)を管理していますが、そんなことをイチイチ顧客に伝えるなんて馬鹿なことはしません。
またスマートフォン上で画面を上から下にスワイプすると最新情報が入ってくるSNSの仕様は、スロットマシーンをお手本にしています。SNS企業はユーザーを中毒にして利用時間を増やす戦略をとっているのですが、SNS企業にとって不都合な真実は、内部告発されるまで公にされませんでした。
そう。コントロールする秘訣は「コントロールしていることを伝えないこと」にあるのです。
だから日本の教科書をボロボロになるまで読んでも、自分たちががんじがらめになっている「社会のカラクリ」はわかりません。そう。伊藤博文にしろ、マッカーサーにしろ、大企業にしろ、社会の働きを熟知している「ズルい人」たちは、社会をコントロールしている事実をわざわざ丁寧に教えてはくれないのです。
誰も教えてくれない以上、自分で学ぶしかありません。学校で教えてくれない以上、親が子どもに教えるしかありません。お金を支払えば「優秀な教師がきっと教えてくれるはず」と期待するわけにはいかないのです。
(続く)